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介護保険法第1条の概要は「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となった者に対し、自立した日常生活を営むことができるよう必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うための制度である」と記載され、純粋の介護ではなく医療を含んでいる。換言すれば「高齢者慢性期医療・介護保険」であると言う(二木氏)。これについて、歴史的視点から健康への対応が公衆衛生から慢性疾患対策に変わり、今では老人退行性疾患の段階に至っている。そして「医療モデル」は「生活モデル」として捉え、「疾病」でなく「障害」として捉えた対応が求められる。この健康変換は単に高齢者にのみ限るのでなく社会保障全体の再編に捉える必要性を提言している(広井氏)。この視点から介護と歯科の関わりについて述べたい。
超高齢社会における健康問題を考える上で、基本的な指標である高齢者の人口構造の変化は75歳以上の高齢者が全人口に占める割合が2008年9%から2055年では3倍の27%と推計されている。その高齢者の内容は認知症高齢者の増加であり、世帯形態は一人暮らしの高齢者の増加だという。こんな中で介護保険は施行されてから10年が経過したが、介護費用は初年度3.6兆円から7.9兆円に増加し、保険料も2911円から約2倍の5416円に増加した。この変化は予想されたものであったが、国はこの事態に対して、介護適正化推進運動を行い、給付費の抑制的政策を図った。3年ごとの改正で介護の質の低下、介護認定の軽度傾斜化により介護者の生活を圧迫した。更にヘルパー等の生活は困窮し、ケアマネの裁量権は抑えられ、仕事を離れる人が増加し問題化した。社保審介護保険部長の山崎氏は、この変化の過程において「制度運営が次第に中央集権的になり、当初の理念から遠のいているような印象がある」と述べている。
2005年の介護保険制度改正により地域密着型サービスが導入され、地域包括支援センターが設置された。ところが、人気の生活支援サービスは同居家族がいれば受けられなくなってしまった。これは「介護支援を多く利用する軽度者に重度化が多く見られる、即ち自立支援を阻害している」ということが理由だ。ホームヘルプサービスは高齢者の人気メニューだったが、家族に負担を押しつける介護保険の理念に反する改正となった(遠藤氏)。2002年度の制度改革において、介護保険給付費の急増を抑制するため新予防給付が新設された。これは医療的色彩が強く「高齢者慢性期医療・介護保険法」としての性格を強めることを意味している。しかし、介護予防の長期的健康増進効果や費用抑制効果を厳密に実証した研究は、国際的にも全く存在しない(二木氏)。よく言われることだが、早期リハビリを行っても累積医療費は増加するといわれている。今日の経済成長の低下という中で、高齢社会はもはや成長・拡大では対応できない。
そこで高齢者に対する基本的理念の価値感の変更を行い、それに沿った社会システムの構築が必要であるといわれている。どんな社会システムを志向するのか、医療団体として日歯は提言する責務を追っている。わが国の社会保障は財源的に介護と医療の領域の区別が不明確である。即ち、保険と税という異なる財源が渾然一体として投入され、制度の主旨を不明確にしている面がある。これは日本の社会保障の特徴であると言われていて、保険と税を明確にすべきという医療経済学者もいるが、むしろ財源の共有化という日本的な考え方であり、良いのではないかと考える。特に、高齢者を対象とする領域には、医療・介護の一元的運用の方向性にも合致しているので、積極的に活用するべきではないか。
次の改正は社会保障全体の在り方が大きく捉えられ、既存の考え方を押し通そうとする機会にしようとするならば、国民からはそっぽを向かれかねない。同時改定を目前にして、歯科は介護保険にどこまで関われるか、将来の姿を歯科の立場から議論を行い、具体的施策を提言する必要がある。
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